【前回の記事を読む】職場で盗みを疑われ、心療内科へ。「魚なんて盗んでません」と訴えたところ、女医は「うーん、面倒くさいな。じゃあ辞めれば?」と言い放ち…
サイコ10――古くて新しい人生
「古葉月渚さん、あなたって、昔、奇跡の少女って呼ばれてた超能力者ですよね。そんな力があれば何だってできるじゃないですか。スーパーなんかよりずっと面白い仕事ができるに違いないですよ」
月渚は愕然とした。
「先生まで私を馬鹿にするんですか?」
「馬鹿にするなんてとんでもない。子供の頃、あなたのことを知った時、私、あなたの大ファンになってしまったの。
他の誰が何と言おうとも、私はあなたの力を信じます。だからスーパーのことにはそんなにこだわらなくてもいいのよ。あなたならきっとまた新しい仕事ができるはず。
だから今はゆっくり休んでください」
月渚はひどく馬鹿にされた気がしてがっかりしながら部屋に戻った。
結局夜になっても食事はとらなかった。ただベッドの上で何度も寝返りを繰り返していた。
一晩中眠ることができず、今までの人生を全て振り返ってみたが、いいことなんて一つもなかったことに気がついた。
(やっぱりあの時、死んでしまった方がどれだけ楽だったか)
そう思うと、自分を助けた園長のことが恨めしく思われた。
そして、自分にとって唯一誇れるのは自殺する覚悟を持てたくらいのことだと思った。
分かった。明日、店に行こう。そこでどうなるか分からないけど、あんまり酷い時はもう一回死んでやる。
こんなくだらない世の中、こっちから願い下げだ。
そう覚悟を決めると、ほんのわずかな時間ではあったが、彼女は眠り込んでしまった。
覚悟を決めたせいか、翌朝は体調も幾分改善していた。7月の空も晴れ渡っていて、蒸し暑くさえなければ、もっと清々しかったに違いない。