竜巻は人、動物、樹木、車、電車、建物と、地上のありとあらゆる物体を吸い上げながら、北東へ向かっていた。
麻利衣は竜巻の中をぐるぐると激しく回転しながら、少し前方に白いワンピース姿の賽子が同じようにぐるぐる回っているのを見た。
背中にはドクトルがしっかりとしがみついている。1時間程経つと、竜巻は急に下降を始めた。賽子が徐々に麻利衣に近づき、手を握った。
「脱出するぞ」
そう言うと、二人は竜巻を抜けてゆっくり地上へと降り立った。
そこは観音岩の頂上だった。空は灰色の不穏な雲で覆い尽くされ、辺りは薄暗かった。
竜巻は観音岩のすぐ向こう側に下降し、暗澹たる色を湛えた暗い海面に荒れ狂う巨大な渦巻きを造り出し、その中心の底知れぬ暗い穴の中に吸い込まれていった。
それでも竜巻は治まらなかった。延々と、この世のありとあらゆる物体を巻き上げて、奈落の底に全てを放り込み続けていた。
賽子が言った。
「ブラックホールのようなものだ。もうすぐ、地上の全ての物があの穴の中に吸い込まれるだろう。その次は地球そのものが、それが済んだらこの宇宙全体が吸い込まれて無に帰するまで終わることはない」
「千晶と鍬下さんもこの中に……どうしてこんなことが」
「言っただろう。全ておまえが起こしたことだ」
「私が? 私は何もしていません」
賽子は溜息をついた。