その時、どこからやってきたのかドクトルが穴の上から顔を出し、ぴょんと飛び降りると賽子の頬をぺろぺろと舐めた。

すると不思議なことに賽子の体はたちまち小さくなっていき、6、7歳くらいの少女の姿になってしまった。

「賽子さん……?」

麻利衣が唖然としていた時、苦痛で暴れていた竜の頭がスカイツリーのへし折れた断端にぶつかって破壊し、吹き飛ばされた巨大な鉄柱が穴のちょうど真上に落下してきた。

麻利衣は(もうおしまいだ)と覚悟したが、咄嗟に賽子の上に覆い被さり、目を閉じた。

しかし、いくら時間が経っても何の衝撃も音も感じなかった。

不思議に思っておそるおそる目を開けて上を見上げると、驚いたことに穴のすぐ上で、巨大な鉄柱がくるくると回転しながら宙に浮いていたのである。

麻利衣が驚き呆れていると、鉄柱は突然弾かれたようにどこかへ飛んでいってしまった。

「賽子さん、まだこんな力が残っていたんですね。これだけの力があればきっと助かります」

その時、賽子が目を閉じたまま口を開いた。

「バナナ、いつになったらおまえは気づくんだ? 本当に鈍いやつだな」

「今まで賽子さんのことを信じられなくて本当にごめんなさい。賽子さんは正真正銘、完全能力者(パーフェクトサイキック)です」

小さな賽子は目を開けておもむろに体を起こして立ち上がり、麻利衣の顔を見つめながら言った。

「だからおまえは間抜けだというんだ。私は超能力など一切持ち合わせていない」

「は? 何言ってるんですか。現に今だってあの鉄柱を弾き返してくれたじゃないですか」

「あの鉄柱を弾き返したのはおまえの力だ。バナナ――いや、古葉月渚」

麻利衣は全身に冷水を浴びせられたかのような戦慄を感じ、愕然としていた。

 

「サイコ8――リヴァイアサンの暴走」終わり。「サイコ9――アトラスの失踪」に続く。

次回更新は9月1日(火)、21時の予定です。

 

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