しばらくして、地面に突っ伏していた二人が瓦礫の下で目を開け立ち上がると、周囲は先程までとは全く別世界の、阿鼻叫喚の巷と化していた。
ビルはほとんど破壊され、灰色の瓦礫が辺りを埋め尽くし、どこが道路だったかさえ見当もつかなかった。
あちこちで人の呻き声や泣き声が聞こえてくる。竜が炎を放った方向に巨大なキノコ雲が上がっているのが見えた。東京中が火の海に包まれ、どこもかしこも黒煙がもうもうと立ち昇っている。
破れかぶれになった竜はさらに四方八方に炎を吐きまくり、首都全体を廃墟と化していった。
先程までの青空は地上の劫火で茜色に染まった黒雲で覆い隠され、昼間であることを忘れるほど地上を闇で覆い、その中心に巨大な黒竜が聳え立つさまは、まさに地獄絵図そのものだった。
賽子はそれでも竜と戦い続けていたが、竜の力に圧されて、遂に撤退を始めた。
東の空に向かう青い光を喰らわんとして竜は大口を開けて地上から飛び立った。
「賽子さん! 鍬下さん、私たちも追いかけましょう」
「いや、無理だ。車は壊れてしまったし、動いたとしても瓦礫が道を塞いでいて走行は不可能だ」
「そんな……」
その時、鍬下の目に埃を被った2人乗りの赤い小型のジープのような乗り物が飛び込んできた。車輪の代わりに4つのクローラがついている。
「ポラリスレンジャー、東京消防庁の全地形対応車両だ。これなら行けるかも」
鍵がついたままだったので鍬下はエンジンをかけた。
「行けそうだ。乗って」
二人は賽子を追って走り出した。
次回更新は8月31日(月)、21時の予定です。
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