俳句・短歌 四季 歌集 2020.10.15 歌集「旅のしらべ・四季を詠う」より三首 歌集 旅のしらべ 四季を詠う 【第22回】 松下 正樹 季節に誘われ土地を巡る尊きいのちを三十一字に込める 最北の地で懸命に生きるウトウ、渚を目指していっせいに駆ける子亀……曇りなき目で見つめたいのちの輝きを綴る短歌集を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 わが身丈越ゆる竹の子皮を脱ぐ いとまもあらず空へ伸びゆく みづみづと伸びゆく竹の子 青膚を 見せて幾重の皮を脱ぎ棄つ *幹の下部の方から皮を脱ぎ棄(す)てる。 親竹に丈を並べて節ぶしに 枝葉を伸ばし若竹となる
小説 『毎度、天国飯店です』 【第6回】 竹村 和貢 サークル勧誘チラシの前で、『徒然草』を抱えた美人と出会った…。 天国飯店の定休日は毎週火曜日。アルバイト生四人で、月曜から土曜の間の五営業日を分担する。四人のうち誰か一人が二営業日に入る。その者以外の三人のうちの一人が日曜日に店に入る。日曜日は大学が休みなので、朝の十時から閉店の午後九時まで十一時間店に入ることになる。「ほな、俺、明日もバイトやさかい、おっちゃんに自分のこと話してみるわ。多分、おっちゃんも構へん言わはる思うねんけど」夏生は、「できない」とは思…
小説 『カトリーヌと囁き森』 【第16回】 智佳子 サガン 六十年前に姿を消した兄を探し続けた妹からの手紙に返事を出せない理由は… ドミニクからの手紙をカトリーヌに読んでもらっている間、ワルツさんは無言で闇の一点を見つめていた。読み終わったカトリーヌは手紙の余白をじっと見つめて動かなかった。やがて「雪になりそうだ」とひとこと言いおいて、ワルツさんは深い緑の扉を押して出ていった。ドミニクからのあとの二通の手紙は返事をくれないことに対しての失望に満ちていた。雪は朝までやむことがなかった。 リュシアン、あの鳥はもう二度と戻ってくる…