俳句・短歌 四季 歌集 2020.10.19 歌集「旅のしらべ・四季を詠う」より三首 歌集 旅のしらべ 四季を詠う 【第23回】 松下 正樹 季節に誘われ土地を巡る尊きいのちを三十一字に込める 最北の地で懸命に生きるウトウ、渚を目指していっせいに駆ける子亀……曇りなき目で見つめたいのちの輝きを綴る短歌集を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 若竹の葉末をゆすり吹く風の 涼しき夏のまためぐりくる 立ちまじる竹の林に若竹の 青くつやめく幹まぎれなし 改行2行取り 若竹の節ぶしの間の内側は 筒のやうにてきよらかなり
小説 『泥の中で咲け[文庫改訂版]』 【第7回】 松谷 美善 母さんが死んで、一人で生きていかなければならなくなった。高校中退後、月6万円での生活。お墓も作れず母さんの骨と一緒に暮らした 一日中、使いっぱしりをして、クタクタになって部屋にたどり着き、買ってあった少しの菓子を貪り食うのもそこそこに、重たい泥のようになって、布団代わりの寝袋に潜り込む。小さい頃から運動習慣のなかった俺には毎日が、筋肉痛が出るほどキツかった。毎朝、四時に目覚ましをかけて、まだ眠くてフラフラしながら起きる。風呂のついている部屋は、最初からはもらえない。申し訳程度についた小さなキッチンの流し台で、頭を洗って…
小説 『居場所がない団塊世代のあなた方に』 【第4回】 阿弥 阿礼 「今日は、魚取りをするから」——夏の小川に響く、少年たちの声 【前回の記事を読む】幸三少年の通う小学校はこぢんまりとした平家建ての木造校舎で建てられてから60年以上経つ。そのため来年3月には……隣の席の聡子は、色黒の皮膚に、くりくりした目が印象的な丸顔。背は低く痩せていたが、田舎の女の子らしく、快活で物言いはハキハキしていた。聡子の家は幸三の家から、400メートルほど山を上った坂道の途中にあり、見晴らしが良く、村全体が眼下に一望できた。村の道は、ラクダの背…