俳句・短歌 四季 歌集 2020.08.03 歌集「旅のしらべ・四季を詠う」より三首 歌集 旅のしらべ 四季を詠う 【第1回】 松下 正樹 季節に誘われ土地を巡る尊きいのちを三十一字に込める 最北の地で懸命に生きるウトウ、渚を目指していっせいに駆ける子亀……曇りなき目で見つめたいのちの輝きを綴る短歌集を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 次回の記事へ 最新 土を割りさく福寿草 黄金の 花をかかげて春をつげをり 土ひくく 緑ひろがる仏の座 ちひさき花に人目とどかず 庭の木は 赤き角芽をよそひたり 雨の日ごとにほぐれてゆかん
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『司法崩壊! ~刑務所が足りない!起訴できない!~』 【第12回】 利根川 尊徳 笑うに笑えない飲み会の話題と言えば「親の介護」「自身の持病の話」「結婚しない子どもの話」 「幸いな事に定年延長制度が適用されて、役職はなくなるが後輩の指導と受刑者へのカウンセリングを担当させてもらう事になっている」と来年以降のスケジュールを告げた。「そうか、俺は地元へ帰って、防衛関係協力企業へ再就職するよ。実家の歳取った両親の面倒を見ながら……」と里村は出身地の新潟で年老いた両親を世話しながら通称自衛隊協力企業へ再就職すると明かした。「それって、奥さんを連れてはいかないという事か?」…