しばらくして、夫が父の好きだった日本酒を持ってきて、枕元で一杯傾ける。母も私も一緒に座って、「吾輩にも一杯ついでくれ」とお父さんが言いそうだね、と三人で涙ながらにお酒をすすった。
吟も猫も、近くに寝そべっている。
明日は明日でやることがたくさんあるから一眠りしておかないと、と寝床についたのは午前三時を回っていた。
翌日は、ただただ葬儀屋さんに指示されるがまま、次から次へとやることをこなしただけ。あまり記憶には残っていない。
会社関係は後日お別れの会をすることにして、とりあえずはお通夜、そして翌日は火葬場へ向かう。葬式は菩提寺で家族と親族だけで行うことにした。
近所の人に見送られながら、保存運動に情熱をかけた文化財などゆかりのあった場所を巡り、火葬場へ。
お骨になった父を胸に抱いたときは、ほんのりまだ余熱があった。まるで父の体温のように思えた。九十一歳。大往生だった。
試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。
【イチオシ記事】「実はゴムに穴を空けておいたの。父のアドバイスで」女に嵌められた──妊娠も嘘ではと思って、病院についていくと…
【注目記事】妹の夫から求められた時、抵抗はしなかった。獣のような音をリビングに響かせていると、2階から妹が下りてきて…
ゴールドライフオンラインは、表現者を応援するウェブメディアです。
生身の人間が紡ぐリアルな言葉だからこそ、読者の心を揺さぶる力があると確信しています。
あなたも、"表現者"になってみませんか?
ゴールドライフオンライン編集部:glo_henshu@gentosha.co.jp