【前回の記事を読む】愛犬が夫の命を救ってくれた──飲酒・不眠が続き、血圧は下の方で130になった夫。「いつ倒れてもおかしくない」はずが、みるみる回復。理由は…
第三走者 吟(ラブラドール・レトリバー) 平成十四年~平成三十年
父を看取る
主治医から、高齢でもあり、あと一週間ぐらいの余命だろう、と言われた。
昼間は母が付き添い、夜は私が入れ替わって病院の個室のソファで寝た。
それでも昼間体調がよいときは、昔の思い出話をする。ほとんどが学徒出陣で軍隊に行ったときの苦労話が多かった。
毎日顔を見にきていた夫に、突然、「あとをよろしく」と、改まって言うかと思うと、「吟は元気でいるか」とつぶやく。
それは日曜日だった。
あまり面白くもないNHKの大河ドラマを見ているときに、モニターの数値が急に降下して警告音が鳴る。
ここ数日は、モニターの警告音が鳴ってはナースが駆けつける、その繰り返しだった。 が、このときはさっと姿を消して、当直のドクターが呼ばれた。そして、父の身体に聴診器を当てる。私にほかの家族を呼ぶようにと言う。
大急ぎで電話をかけると、一時間ほどして、夫と母がタクシーでやってきた。
三人そろったところで、当直のドクターが腕時計に目をやって、「十一時十分。ご臨終です」と宣言した。