【前回の記事を読む】高齢になると、中途覚醒や夜間頻尿がおきやすくなるメカニズム──実は、「体温」のパターンが若者とは違うから…
第三章 患者さんとの会話から学ぶ、夜間頻尿の正体
―年齢・季節・生活習慣からみた生体リズムと健康管理―
1.睡眠と深部体温のリズムが導く夜間頻尿のメカニズム
―若年者と高齢者の違いからみる、生体リズムと排尿の関係―
3)深部体温と睡眠パターンの比較、発汗・呼気と尿量の関係(第一の仮説)
図③④は、若年者と高齢者における睡眠パターン、深部体温、発汗・蒸発、尿量の経時的な産生状況を仮説としてグラフ化したものです。若年者と高齢者の違いを比較することで、加齢による生理的変化が睡眠と排尿行動にどのような影響を与えるかを視覚化しています。
若年者の特徴
・深いノンレム睡眠中には、副交感神経が優位となり、発汗・蒸発が増加し水分が失われるとともに、抗利尿ホルモン(ADH)の分泌が促進され、尿産生が抑制されるという仮説が考えられます。
・浅い睡眠が増えると副交感神経の優位性が低下し、水分喪失が抑えられて尿産生が増加するため、夜間頻尿が起きやすくなるという観察結果とも一致しています。
・レム睡眠時の呼吸変動や水分蒸発が血漿浸透圧やADH分泌に 影響を及ぼす可能性があります。水分喪失によって血漿浸透圧上昇からADHが分泌されやすくなり、尿が濃縮されやすくなります。レム睡眠が多くなる早朝は尿量がそんなに増えません。
高齢者の特徴
・深いノンレム睡眠が減少し、浅いノンレム睡眠が増え、睡眠の回復機能が低下しやすくなります。
・レム睡眠の量が分散し、少なくなるため、呼気からの水分蒸発が減少し、若年者に比べ水分の貯留傾向があります。
・入眠後の深部体温の低下が不十分であり、深いノンレム睡眠が減るため「睡眠の質」の低下や身体のリカバリー機能の低下に関連していると考えられます。
・浅い睡眠が増えることで水分喪失が減り、レム睡眠の減少による水分バランスや抗利尿ホルモン(ADH)の分泌や作用に影響する可能性があり、尿産生量も増加します。
また、覚醒が頻発し過活動膀胱症状も関係することで夜間の排尿行動が多くなり、夜間頻尿や夜間多尿につながる可能性があります。なお、尿量が増加するその他の複合的理由としては、心血管系の異常、腎機能の低下などもあります。