まえがき
泌尿器科の外来診療に携わり、気づけば40年近くが経ちました。この間、数多くの患者さんと向き合う中で、多くの学びを得ることができました。
特に「夜間頻尿」という症状については、私自身が年齢を重ねる中で、その重要性をより深く実感するようになりました。個人差はあると思いますが、多くの方の場合、悩みの種となっています。
高齢になると、生体機能の低下は避けられませんが、薬や生活習慣の工夫によって不調を改善することは可能です。
この考えをもとに、私は『夜間頻尿の正体』(幻冬舎メディアコンサルティング、2023)という本を執筆し、これまでの診療経験や考察をまとめるとともに、夜間頻尿の要因を視覚的に理解するための「夜間頻尿マンダラチャート」を紹介しました。
この本は多くの方に手に取っていただきましたが、一部の読者からは「内容がやや難しい」という声もいただきました。そこで、わかりやすく、日常に活かしていただける、患者さんにもお勧めできる本を目指し、今回改訂版を出版することにしました。
前作の考え方をもとに診療を実践し、咀嚼(そしゃく)する中で、患者さんからのさまざまな質問や要望に対応してきました。その経験を活かし、今回は診察室でのやり取りや生活指導の具体例を『会話形式でわかりやすく表現』してみました。
前作を「基礎編」と位置づけ、今回は「応用編」として、より親しみやすく実践的な内容を目指しました。特に当院では、夜間の排尿回数を月平均1・5回以内に抑えることを目標に、患者さん一人ひとりの生活状況に合わせた指導を行っています。
本書ではその指導方法を具体的に示し、疾患治療だけでなく、生活習慣の改善にも役立つ情報を盛り込みました。加えて、『我々の日常活動や睡眠の状況は、その日その時の尿の色でおおよそ推測できることを解説』しています。
また、「夜間頻尿の正体」に関する2つの仮説などについても再考察し、読者にわかりやすく身近なものとしてお伝えすることを心がけました。
さらに本書では、老化と夜間頻尿の関係性、そして高齢者が健康を維持するための『長生きのコツ』についても触れています。高齢化が進む現代社会において、夜間頻尿は多くの人が直面する課題です。本書を通じてその改善方法を学び、快適な日常生活の実現に少しでもお役立ていただければ幸いです。