第1章 対策するための第一歩!まずは夜間頻尿の実態を知ろう
この章の流れ
疫学調査と比較し、当院の簡単な診療実態を示しました。そして通院年齢層について検討するとともに、夜間頻尿のマンダラチャートを紹介してその改善の向性を示しました。
1.年代別に見る夜間頻尿の頻度と特徴
まず、治療中の当院男性通院患者における夜間頻尿の回数実態について説明します。近年、男性特有の前立腺や膀胱の機能バランスの変化により、高齢になるにつれて排尿障害が出現して治療を受けに来られる方が増えています。
図②は、当院に通院治療中である該当患者さんを年代別に分類し、それぞれの夜間排尿回数の割合を示したものです。
このグラフから、若い年代ほど夜間頻尿の頻度が少なく、「0回」の頻度が高い傾向にあることがわかります。しかし、60代以降では夜間頻尿の治療抵抗性が増えだし、70代、 80代では「2回」の頻度が増えてきます。
そして90代になると、「2回」や「3回」がさらに顕著となり、多くの方がその範囲に分布しています。これは、通院患者が治療を受けているにもかかわらず、薬や生活指導の効果が徐々に限界を迎えている可能性を示しています。
また、活動量や体力、気力が年代とともに減少することが夜間頻尿の増加に関係していると考えられます。さらに、一般的な夜間頻尿の疫学調査(図①)でも、年代が上がるほど夜間頻尿回数が増える傾向が確認されています。
「0回」が中心の人の割合は高齢になるにつれて急激に減少し、80代では「0回」がわずか3・4%、半数以上が「3回以上」となることが報告されています。このように、排尿障害の有無にかかわらず、高齢者における夜間頻尿の発生頻度は非常に高くなっており、生活困惑度を増していくのが実態です。
なお、夜間頻尿の定義は「1回以上」とされていますが、これは主に若年層における基準です。60歳以上では「1回」までが正常範囲と考えられることが多く、当院では患者さんに対して平均「1・5回以内」を目標とした生活指導を行っています。
図①と②を比較すると、疫学調査では70代、80代の最頻値は2~3回以上ですが、当院の治療通院者では最頻値が1回となっており、夜間頻尿の改善が極めて良好でした。
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