歩夢は中学二年生になってまだ間もない。一年生のときは卓球部に入ったが、先輩のシゴキがきつく一学期でやめたそうだ。

入学時、担任の先生がホームルームで、

「みんな何か部活に入るように! そして先生にどこに入部したか報告しに来なさい!」

それが当然であるかのように話し、付け加えて活動的に過ごすためには運動部に入れと。

「先生は剣道に打ち込んだ。それが私に不屈の精神をもたらしたのだ」と暗にほのめかしたのだ。

入学したばかりの生徒たちは、まだ右も左もわからない。ほとんどの生徒が先生の言葉に従った。

中には「何も入らない」と先生に報告した生徒もいた。密かに職員室で報告したのに、先生はわざわざホームルームの時に、その生徒を名指しして非難した。クラスメートもそれに呼応したものだから、無所属の生徒は吊し上げ状態で泣いていた。

考えあぐねていた歩夢は、このままでは次は僕がスケープゴートになってしまう。早くどこかに入部しなければ……。歩夢は焦った末、最も運動量が少ないんじゃないかという安易な考えから卓球部に入部したのだ。

しかしそれは甘い判断だった。というのも、彼の中学校は常に県大会上位に進出する強豪校だったのだ。

そのシゴキは凄まじく、先輩の気分によって、腕立て伏せ五十回だったり、グラウンド十周だったりを強制されていた。

そのくせ体育館の中では、先輩たちのラリーの玉拾いばかりで、ラケットを持って素振りができるのは、先輩達が帰って、一年生が卓球台を片付けた後だ。

夏休みになったら、自主的に登校した者だけが、ようやく卓球台で練習ができるらしいということを同級生から聞いた。

そんな先まで続ける自信はない。だけど今辞めたら、担任から何を言われるか分からない。そんなことを気に病んで、一学期は欠席しがちになったとのことだ。

先生からは「勉強もクラブ活動ももっと頑張れ」と叱咤激励の日々で、退部届を出した七月以降はほぼ学校には行かなかったという。

生来の感受性の強さもともなって、「もう頑張れないよ」とお母さんに吐露した。

担任は二学期になってから家庭訪問を繰り返し、学校に来るよう促したが、担任に会うのさえ怖がっていた歩夢はやがて自室にこもるようになった。

お母さんは歩夢の気持ちを尊重して、担任には家庭訪問を断り、家庭内で見守りながら普段の生活をさせて欲しいと伝えた。

次回更新は8月19日(水)、14時の予定です。

 

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