後日、葵は再び雛菊と約束を結んで同じ喫茶店へ足を運んだ。しかし人が多くて見つけられない。

「雛菊ちゃんと待ち合わせしてるんですけど……」とマスターに伝えてようやく案内してもらえたほどだ。

雛菊は熱心に書き物をしている。そのせいで葵に気付かなかったらしい。

「えらいね。宿題?」

そう言うと雛菊は驚いて肩を跳ねさせた。教科書の書き込みを注視していたせいで気付くのが遅れたらしい。

「あ、ごめん。ビックリさせちゃった?」

「い、いえ、ちょっと集中しすぎてたみたいです」

言いながら雛菊は慌てて教科書を閉じてカバンにしまったのだが、急いだせいで入れそこなって筆記用具一式を落としてしまった。

「あ、ごめんなさいっ」

「いいよいいよ。手伝う」

「だ、大丈夫ですから」

「そう?」

雛菊はテキパキと物を拾ってカバンに詰め直した。ただ、葵はそのカバンが妙に膨れていることが気になった。

「荷物多そうだけど重たくないの?」

「えっと、今日は体育があったので体操服が入ってるからです。置き勉もしませんし」

「わ、偉いなぁ。私なんてほとんど置き勉だったから、カバンなんていつもペラペラだったよ」

「あ、あはは……」

能天気に笑う葵に雛菊は苦笑で答えた。

「それでね、この前言ってたことなんだけど、課長に聞いてきたよ。単刀直入に言うと、人を生き返らせることは出来る」

「ホントですか!?」

「うん。その前に命の譲渡にまつわる基本的なルールについて説明するね。スマホに送るから」

・死に瀕した大切な人の前で、自分の命を差し出してでも救いたいと強く願うと死神を呼ぶことができ、命を差し出せる。

・命は一度しか貰えない。

・命を譲り受けた人物の怪我や病気は死なない程度に緩和されるが、手足などが失われている場合は元に戻ることはない。

・命を譲りうけた人物は差し出した者の記憶を失い、自分が命を譲り受けたことを知らないまま生きていくことになる。

・子孫をもつ人物が第三者に命を差し出した場合、子孫もろとも存在が消失する。

次回更新は8月15日(土)、11時の予定です。

 

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