この年、アメリカではホイットニー・ヒューストンの「Saving all my love for you」が大ヒットをしていた。

客がいないとき、店では音楽専用のFM放送(?)がいつも流れていたが、皿洗いをしている時、しょっちゅう、この曲が流れていて、誰が歌っている、何という曲なのか、調べる余裕もなかったのだが、最後に繰り返される「Saving all my love for you」と繰り返されるフレーズだけは耳に焼き付いた。

日本に戻り、街を歩いていると、この曲が突然、流れ、「あっ、あれだ」と思わず足を止め、鬱気と戦いながら皿洗いをしていた時の自分の必死な心境がまざまざと心に浮かび、「とにかく生き延びたな」と呟いた。

この時時差ボケから始まった不眠症は、二か月は続いたし、昔、私の首を絞めて遊んでいた兄も少しも変わっていないことが判明し、早く日本へ帰りたい、という思いしかなくなっていた。

本当は、一か月しかビザがないので、ともかく一月だけと頑張ったのだが、兄がある時、ダウンタウンにある日系人の弁護士事務所に連れて行き、言われるがままに百ドル払うと、簡単に6か月に延長される算段ができ、がっかりしたのだった。

次回更新は7月27日(月)、11時の予定です。

 

👉『好きでないことだけで生きて行く 』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】「何も気づかなくてすみません…」彼はそう言って、彼女の唇を何度もついばんだ。だが胸が高鳴ったのは、キスのせいだけではなく……

【注目記事】2年間続いた不倫関係…飲みの席で発覚したのは、“自分はセフレでしかなかった”という事実。相手の男は他にも2人の女性と関係を持っていて…

 

ゴールドライフオンラインは、表現者を応援するウェブメディアです。
生身の人間が紡ぐリアルな言葉だからこそ、読者の心を揺さぶる力があると確信しています。
あなたも、"表現者"になってみませんか?
ゴールドライフオンライン編集部:glo_henshu@gentosha.co.jp