「んー。やっぱりまともな回答はついてないかぁ」

若菜と会って数日後の昼休み、葵は渋い表情でマウスをスクロールさせている。日常のあらゆる疑問をほかの利用者に質問するインターネット掲示板のサービスで死神について質問してみたのだが、芳しい答えは得られていない。回答欄は

『死神とか厨二かよ』

『俺も消したい黒歴史がいっぱいあるわ』

『命じゃなくて記憶を奪って死神にメリットなんかあんの?』

といった駄文で埋め尽くされており、本気で受け取られてないことは確かだった。信じてもらえるとしたら葵のように死神の業をこの目で見たことがある人だけだ。だがそんな人物が都合よく見つかる可能性は低いだろう。

「課長は命を差し出した人間でもこの世に留まり続ける方法があるって言ってたけど、それってどうやるんだろ。やっぱり直接聞くしかないのかな」

たまらず溜息を吐く葵。すると昼食から戻ってきた同僚の加藤が「なーにため息吐いてんの。幸せが逃げるぞー」と心配してくる。

「なんだ加藤かぁ」

「なんだとはご挨拶だな、このー。……なによ、キョロキョロして」

「いや、課長は? 一緒にお昼行ってなかったっけ」

葵としては至極まっとうな疑問をぶつけたつもりだったのだが加藤は『は?』とでも言いたげにジトッとした眼差しになった。

「昼から出張って言ってたじゃん。今日は移動と前挨拶で終わるけど」

「あー、そんなことも言ってたなぁ」

「いやアンタね……。いい機会だから同期のよしみで忠告してあげるけど、アンタ課長とフレンドリーに接しすぎよ」

「え、そう?」

「そうよ。二人きりの時ならまだしも他の社員の目がある時くらい、もっとシャンとしなさい」

加藤に言われると思い当たる節があったのか、葵は「……反省します」と言った。東や若菜との一件でも上司に対する態度でなかったことがしばしばあった。

「でもよくあんな感じで話せるね、アンタ。だってあの課長、ちょっと怖くない?」

「こわいぃ? どこが」

「なんていうか、表情の起伏が少ないところとか。なに考えてんのか分かんないもん。新人のミスを注意する時も無表情で理詰めするじゃん?『ここはどうしてそうなった? どんな対策をしたら同じミスをせずに済む?』みたいに。実はアレ、苦手にしてる子もいるのよ」

「へー。私は苦手だとかちっとも感じたことないけどなぁ。頭ごなしにキレるおっさんより断然いいじゃん」

すると加藤は呆れたように「アンタたちって案外似た者同士なのかもね。親子か」と肩をすくめた。

次回更新は7月25日(土)、11時の予定です。

 

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