「先生、それって詭弁だよ」
「『詭弁』なんて、難しい言葉、知ってるんだね」
「うん、これでも国語は得意なもんで」
今度は、陽葵はおどけながらピースサインをしてみせた。
まだ数回しか会ってないのに、あまりに距離感が近いものだから、こちらのほうが戸惑ってしまう。
英語と国語は5をとっている。英語や国語が得意な理由を知りたくなった。なぜなら、数学を好きになる動機付けのヒントになればと思ったからだ。
「どうして英語や国語を好きになったの?」
陽葵は本棚を指差す。そこには日本語版の百科事典とそれらを英訳した百科事典がそれぞれ20巻、ズラリと並んでいた。
「この百科事典はね、世界の国の文化とか、宇宙の始まりとか、面白いことがいっぱい書いてあるの」
少し興奮気味に陽葵は続ける。
「身の回りの『なぜなに』がすごく分かりやすく書いてるんだよ。小難しい日本語じゃなくて、易しい日本語でね」
俺も実は本棚の百科事典が、授業初日から気になっていたので、見せてもらいたくなった。
「少し百科事典、見せてもらってもいいかな?」
「うん、いいよ。それ読んだら先生も賢くなるよ」
今度はこめかみ辺りに人差し指を立てておどけている。
負けじと「先生がこれ以上賢くなってしまったらどうしようか。毎回もっと難しい問題を陽葵に持ってくるよ」
今度は眼前で手をあわせて、それは勘弁といったゼスチャーをしてくる。
次回更新は7月22日(水)、14時の予定です。
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