「ははははは。河原賽子ともあろう者が兎のように逃げ回るしか能がないとは惨めなものだな。
往生際が悪いとはきさまのことだ。正々堂々と俺と勝負したらどうだ」
賽子はようやく体を起こし、振り返って八重沢を睨みつけた。
「馬鹿め。私が何も考えずただ逃げ回っていたと思うのか。さっきの悠雅との戦闘で超能力(フォルス)をほとんど使いきっていたから、回復するための時間稼ぎをしていたのだ。
今のところまだ10分の1に過ぎないが、おまえ程度ならこれで十分だ」
「ふん、面白い」
二人はじりじりと歩み寄った。
「賽子さん、やめてください! あいつは化け物です。かないっこありません。逃げて!」
麻利衣が悲痛な叫び声を上げたが、賽子は聞く耳を持たず、八重沢ににじり寄って行った。
次の瞬間、賽子をロックオンした八重沢はにやりと笑って右手のレーザー砲を発射した。だが、それと同時に彼の右腕は炎に包まれ燃え上がり、溶鉱炉に突っ込んだようにドロドロに溶け落ちてしまった。
「まさか」
今度は左腕で狙おうとしたが、そちらも同様に炎上し、やはり溶け落ちてしまった。
「まさか、この力は……悠雅……まだ生きていたのか!」
見ると真っ黒こげの上半身だけになった西須がまだそこだけは生き生きとした眼を開けて右の掌を八重沢の方に向けていたのである。
遂に炎は八重沢の機体全体を包み込み、溶かし始めた。
「このまま死んでなるものか! 恨みを晴らすまでは!」
八重沢はエンジンを全開にして賽子に向けて突進した。
「賽子さん!」
麻利衣が叫んだ。
賽子は泰然と八重沢の正面に立ちはだかり、右の掌を前方に突き出した。
すると八重沢の機体は爆発を起こし、脚が吹っ飛び、胴体は地面に突っ込んで炎上した。