俳句・短歌 歴史・地理 歌集 日本列島 2020.10.11 歌集「秋津島逍遥」より三首 歌集 秋津島逍遥 【第31回】 松下 正樹 “忘れえぬ旅をまたひとつ三十一文字に封印す” ――日本の面白さに旅装を解く暇もない 最果ての無人駅から、南の島の潮の香りまで、まだ見ぬ土地に想いは募る。 尽きせぬ思いが豊かな旅情を誘う、味わい深き歌の数々を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 田の神とよばれてあさる白鷺の 青田の遠に見え隠れする *あさる エサを探し求める。 寒風山より見おろす稔田晴れわたる 大潟村は遠くあかるし なだらかな草原そよぐ風に乗り 雉の鳴きたつ声のきこゆる
エッセイ 『プリン騒動[人気連載ピックアップ]』 【新連載】 風間 恵子 「そんなプリンなんか作ってないで、早くメシのしたくしろ!」台所で一挙手一投足に怒り狂う義父。言葉の暴力が鉛となって心臓を突き抜けた。 ある晩のことだった。三人で、夕食のしたくをしていた。この三人と言うのは、舅(しゅうと)・姑(しゅうとめ)・嫁すなわち、私の事である。台所は女の神聖な場所と考えられているのではないか。しかし、この家では、舅が当たり前のように立つことが多い。自分が調理したものは自慢をするが、人の作った料理は決して、美味しいとは言わない。逆に貶す事に喜びを感じるタイプである。野菜の切り方から、味つけまでを一つ一つ指摘…
小説 『溶けるひと』 【第17回】 丸橋 賢 ひきこもり治療の新たなステージ 母が見出した「歯科医へ行く」という決断。ひきこもりの息子を変えたのは理論のない治療だった。 今日は応急的に苦痛を改善するために、インスタントのスプリントを作る。その効果は既に行ったバイト・トライで明らかなので、あれと同じ効果は出る。インスタントのスプリントは一週間くらいしか持たないので、その間にプラスチックで正式なスプリントを作る。その型採(ど)りや咬み合わせの決定を今日頑張ってやる。このスプリントの製作には一週間かかる。このスプリントを削ったり足したりしながら数本の歯を咬合調整すれば…