緑川家へと向かう道中、遥香とどんな話をしようか、どう切り出そうかと、そればかり考えた。そして、そうやって思考を巡らせるうちに、あっという間に地元に着いてしまった。意外と近いんだなとさえ感じた。
三年ぶりだったこの地も、三回目ということもあり、大分慣れてきた。地元に戻ることに躊躇していたのが嘘みたいに、なにもマイナスな感情を持たずに平然と歩いている。こんなこと、誰が予想できただろうか。
軽い足取りだからなのか、緑川家には初めに来たときにかかった時間よりも五分も短縮できた。早すぎるのも失礼かと思い、緑川家から少し距離をとって二階の部屋を眺める。遥香は前に自分の部屋は二階にあると言っていた。この道から見える部屋がはたして遥香の部屋なのかはわからないが、カーテンが閉めてあり、室内の様子を覗うことはできない。
今日、自分の運命が決まるのだと思うと、やはり緊張してきたのか、胸の鼓動が早まったように感じる。その胸を鎮めるように、ゆっくりと息を吸って吐く。
腕時計は僕にインターホンを押せと、間接的に命令している。それに応えるように、僕は指を伸ばし、ボタンを押した。しばらくの静寂の後、扉が静かに開かれる。顔を覗かせたのは、由紀子さんだった。
「いらっしゃい」
「今日はお招きいただき、ありがとうございます」
深々とお辞儀をする僕に、由紀子さんは「いいから」と言って、中に入るよう促す。言葉も表情も冷たいが、これまでだったらきっと癇癪を起していたに違いない。彼女がここまでしてくれるようになったのは、少なからず自分の行動の影響があるのだろうか。そう思うことが妙な自信を生ませた。
次回更新は7月7日(火)、11時の予定です。
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