コンクリートの凸凹は歩幅に合わずにまったく歩きにくい。ところどころコンクリート堤がないところが出現するが、ここには葦のようなものが生えている泥地帯なので歩くことはできない。蜆(しじみ)採りをしている人がいて、それを眺めて休んでいたら、向こうも変な男が歩いていると怪訝そうな様子でこちらを見ていた。
この日は田植えの真っ盛り。利根川に沿った田圃には水が張ってあり、あたかも川の水があふれたようであり、湖ができたようでもあり、春の一日の風物詩。そんなあぜ道を親子連れが自転車でやってくる。遠い昔にみたような、ノスタルジックな心象風景。こんな道を、あんな自転車でガタゴトガタゴト、そんなこともあったなと思い出していた。田圃では気の早い蛙が鳴いている。
海岸歩きの時には波が砕ける音があるので、人工的な音は聞こえてこない。しかし川岸歩きではいろいろな音が聞こえてくる。その中でもうるさいのがガソリンエンジンが発する音であることがわかった。
自動車ばかりでなく田植え機も、田に水を入れるポンプも盛んに音を発している。ガソリンがなかった頃はさぞかし世の中は静かだったろう、自然の音に満ちていたろう、と思った。日が傾きかけた頃、見覚えのある橋が見えてきた。
あの橋を渡ると今回の終着点のJR成田線の下総橘駅である。川辺で魚釣る人がいて、私が幸運をもたらしたのか近づいたら鯔ぼらのような大きな魚を釣り上げた。
下総橘駅から電車で銚子駅に戻り、駅前で土産を探して一軒の店に入ってみた。いろいろな土産物があるので店頭にいた主人に銚子の名物は何かと訊いたら、それはなんといっても鰯(いわし)だ、鰯の角煮だと言うので、鰯の干物一箱と角煮を二袋買った。
銚子大橋を歩いて渡るのは決死の覚悟がいるということが前回の海岸歩きのときにわかって懲りていたので、今回はタクシーを奮発して出発点の波崎の河口まで戻った。こんなところに行く乗客はこれまでいなかったとみえて、駅前のタクシーの運転手に河口にある風力発電塔の場所を説明するのに骨が折れた。
(2006年5月3日)
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