遺された古樹

正門前の歩道に、東舞鶴方面行きのバス停があった。時刻表を見ると、次の便は十三時五分、その次は十七時台だった。

スマホの時刻は今、十一時を示している。

炎天下をここまで、一時間ほど歩いてきた。疲労はさほど感じていないが、途中から靴ずれの痛みが少し気になっていた。

帰路は東舞鶴駅までバスで戻ろうかと思い、時刻表を覗いたのだけれど、今日の旅路はここからが佳境だ。

次の便までに散策が終わるはずはなく、といって十七時の便では待ち時間が長すぎる。

帰りも、潮風を浴びながら二十七号線を歩こう。

正門をすぎ、「JMU」の敷地の裏の坂道を上った。西側の樹林に囲まれた高台に、団地を仰ぎ見る。自衛隊の官舎だ。

かつてはあの場所に、海軍舞鶴鎮守府の壮麗な洋館がたたずんでいた。坂道は、沿道の「セレモニーホール」と「建設会館」をすぎたところで二股に差しかかった。

正面に緑地が、左手に児童公園がある。駐車場を挟み、奥には自衛隊の官舎が立ち並んでいる。

緑地の入口付近に、乳白色の洒脱な門があった。間口二メートルほどの左右の門柱から、コンクリートが地面に向かって斜めに曲線を描いてのびている。

門の右下隅に、高さ三十センチほどの石柱があり、「水交社」の黒い文字が刻印されていた。まだ光沢もあるこの石柱は、わりと近年に設えられたものだろう。かつての水交社の跡地には、往時の正門だけが残されていた。