俺はメモ帳にペンを走らせ、確認の意味で尋ねる。

「そして君たちは慌てて逃げ出し、その足で城東警察署に来た、と?」

田中可奈子は頷いた。そして絞り出すように話し出した。

「ライブハウスから一目散に逃げて……『どうしようか?』と3人で話しながら歩いているうち警察署が見えて……警察署の前で3人で話していたら、中から女性警官が出てきて『どうしたの?』って」

俺はある人を思い出して聞いてみた。

「その女性警官って……もしかしてスタイルのいい……胸の大きな人だった?」

田中可奈子は

「そうです! なんで分かるんですか?」

と驚くも、俺は一人納得した。俺は近藤彩の時と同じように《地域課》の直通電話番号をメモした紙を渡すと

「もし、気分がふさぎ込んだり、眠れなくなったりしたら精神的に参る前にここに電話してほしい。そうすれば改めて相談に乗ったりカウンセリングの手配をしてくれる」

田中可奈子は

「ありがとうございます。あの光景が焼きついてしまって……」

俺は

「死体に限らずショッキングな出来事は誰しもがトラウマにもなる。一人で悩まず電話してほしい。そうすれば例のスタイルのいい女性警官さんが何とかしてくれるはずだよ」

田中可奈子は頭を下げた。俺は最後に尋ねた。

「確認なんだが、俺に話したことに〔嘘〕はないよね?」

俺は田中可奈子の目を見つめる。田中可奈子は目をそらさず俺を見つめ返し頷いた。心の中で安堵すると

「それじゃあ、これで失礼するよ!」

言葉の後に俺はエントランスに向けて歩き出し、振り返る。そして

「悩む前に『まず相談』!」

俺はぎこちない笑顔とともに念押しする。田中可奈子も軽く表情を緩ませ

「はい! ありがとうございました」

と答えドアを閉めた。俺はエントランスを出るとコインパーキングに向けて歩き出した。