【前回記事を読む】刑事を名乗ると「開いているのでどうぞ」…見ず知らずの男である自分を部屋にあげて、キッチンでお湯を沸かす彼女に…
# 9 #
「死体が無かったんですよね?」
俺が言い終わる前に山口知佳が結論を言ってきた。俺は頷き言葉を続ける。
「近藤さんや田中さんから多少聞いているだろうが……見たんだよね? 死体を?」
俺はメモ帳とボールペンを取り出し、山口知佳の答えを待つ。キッチンから、はっきりとした口調で
「断りもなく控室に忍び込んだのは悪かったと思ってます。私たち3人が見たのは間違いなく死体でした。スーツを着た女の人で……うつぶせで……」
言いながら山口知佳が、トレイにマグカップを2つ乗せて部屋に入って来た。マグカップからはコーヒーの香りが立ち昇っている。山口知佳は俺の前にマグカップを一つ置くと
「砂糖とミルクはいれますか?」
と尋ねてきた。俺は
「いや、ブラックで頼むよ」
即答する。山口知佳は自分のマグカップに砂糖とミルクを入れ、スプーンで2、3回混ぜた。俺は
「折角なのでいただくよ」
とコーヒーを口に含む。インスタントとはいえコーヒー特有の苦味が口の中に広がった。俺はマグカップをテーブルに置くと質問を切り出した。
「思い出したくはないだろうが、死体はどんな感じだった? 覚えている範囲でいい」