夏季合宿後も兄は休まずにこばとに通い続けていたが、言葉にはつながらなかった。文字や数字への興味も薄かった。

視覚的には識別するが、文字と音声はマッチングしなかった。その代わり唾飛ばしにも表れているように、妙なところが器用でいろいろないたずらを思いついてやっていた。

三年生を目前にしたある日、クラスで何か気に入らないことがあったのか、彼は支援学級の友達を噛んでしまった。

長男は重度ではあるが他害や自傷がないだけでもましだ、とお母さんは言っていた。しかし彼が他害をしたということを担任の先生から伝えられた時、「他害」の一言でお母さんの気持ちはぽっきり折れてしまった。

もう支援学級ではやっていけない!とお母さんはきっぱり決心した。

即、特別支援学校への転校を決めた。そして、こばとも即、やめてしまった。

妹の方は小学校入学直前までこばとに通わせた。兄も妹の送迎に一緒に付いてくることがあったが、彼はこばとの入り口から離れたところで立ち止まり、こばとには絶対に入ってこようとはしなかった。

言葉を喋らないだけで、成り行きのすべてを分かっているようにも見えた。

その後、妹は兄と同じ支援学校に入学し、二人ともこばとをやめた。

風の便りで妹は言葉が出てきたと聞いた。娘の言葉を耳にしたお母さんが、涙する姿が目に浮かんだ。

どれほど待ち望んでいたことか。