夏合宿当日、お母さんに手をつながれて兄妹二人揃って集合場所であるこばと前の高架線の下に到着した。

妹は初めての合宿でも不安の色はなく、引率スタッフに誘導されると拒否する態度もなく列に加わった。

兄妹は別々の班に分かれたが、離れる時もお互いを見合ったりもせず、至極あっさりしたものだった。

二人とも言葉の出ない重度の自閉症。お互いが家族という意識はまだ育っていないのかもしれない。

家庭での様子をお母さんに聞いても、兄妹として関わり合って遊ぶわけでもない、お互いを意識する様子はない、と言っていた。合宿でもあえて並ばせたりせず、別々の班に配して出発した。

二人ともスタッフの指示にも従えたし、多動や泣きもなく、合宿活動のプログラムを順調にこなしていった。

引率スタッフ達も何度も夏合宿の経験を積んでいるので、注意すべきポイントはしっかり押さえており信頼できた。全員障がいを持つ幼児達の合宿ではあったが、私は楽しむ余裕も持てていた。

先入観を覆す兄妹愛

二日目の活動プログラムは昭和の森の探検だった。森の中にあるアップダウンの多い小径をスタッフと手をつながず、幼児を自力で歩かせるのが狙いだった。

手をつながなくとも集団の後ろについて歩けるか? 急に走り出したり、しゃがみ込んで動かなくなったりしないか? 集団に合わせて歩けるか? を観察しながらの探検だった。

山道は細い一本道なので、列の間々にスタッフを配置すれば、手つなぎなしで歩行が可能だった。

大きな池を取り囲む、アップダウンのある細い山道は安心して歩けた。全員まずまず順調な歩き方だった。坂道を登りきると頂上は広い野原になっていた。

周りは何もない芝生の中を森の一本道から続く細い通り道が続いていた。

道の両側は藪など遮るものがない見晴らしの良い原っぱ。子ども達が一本道の外に飛び出したらまずいな、という思いがチラッと浮かんだ。

その時突然、妹は何か見つけたか、気になったのか、列から外れて原っぱの中に小走りで入っていった。

 

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息子をなだめた、たった一言のはずが――あれから「痛いの痛いのとんでいけぇ~」を1日何十回も求めるように…応じないと、さらに繰り返し……

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