【前回の記事を読む】店を後にして車は走り出した。「次はうなぎ食べに行こう」と言われたが、私は彼が食事に誘う理由について考えたくなかった。
第一部
四 受け止められない事実
「君は芯が強い子だから大丈夫」
と私の肩をぽんぽんとさすった。
伯母が起きてくると、伯父は煙を巻く様に姿を消した。姉のところに行ってくると言う。
祖母が検査入院をするらしい。
どこか悪いのか尋ねると頭痛と不眠、食欲もない、毎日頭が痛いと訴える。さすがにおかしいと、健康診断みたいな感覚で病院に行くと言った。
祖母は心と体のバランスを崩したのだろうか? クリニックにも、そのような患者がたくさん来院する。照史ならなんというだろう。
それから私は早く家を出て教会へ直行した。朝のお祈りに参加しているからだ。彼と話がしたい、メールの中身を聞きたいと我慢ができなかった。
私は教会堂の扉を静かに開け、後方に座りそれを静かに見守った。厳かな雰囲気が伝わって、そして神の導きに感謝を伝えている。私も目を瞑り心が落ち着いていくのを肌で感じた。
参加者が帰宅する中、寺田が照史に声をかけ、何やら二人で話をしている。私が側に駆け寄ると、寺田は微笑んで挨拶をした。またいつでもいらして下さいと歓迎してくれ、そのまま行ってしまった。
何を話していたのか気になっていると、照史が聞くまでもなく話してくれた。これから本当の心を思い出し、心ゆくまで祈れるようにと、教会で寝泊まりする許可をくれたと答えた。
照史の抱えている問題を、すでに知っているのだろうと思った。寺田は先生だが、少なくとも彼の父親代わりでもあり、幼い時から見てきたのだからわかるのは当然だろう。
いずれにせよ、目には観えない精神世界の奥深さはまだ私には理解できない。感じた違和感も彼の口から、はっきりと聞いていない。だから信じない。
あれはきっと夢の話だと、そう思うことに決めた。ただ心底安心できる場所があって良かったと、それだけは素直に思えた。