【前回の記事を読む】帰る時間になって、おでこにキスをされて、「子供扱い」と思った。今夜は一緒にいたいと、素直に言いたかったが…
第一部
三 異変
私はその夜夢を見ていた。明晰夢のように意識がはっきりしているように感じる。夢には照史がいて、暗闇を一人歩いている。
そのうち彼は教会堂に消え、私も後を追い教会堂に入った。彼は長椅子に腰かけていた。真夜中は暗く静寂に包まれ、蝋燭の灯りが一層神秘的な雰囲気にさせている。ステンドグラスから降り注ぐ、月夜に照らされた彼は銀色に輝いている。
その姿は天使に見えた。照史は背中から深くもたれ天井を見上げて、身体中の骨が軋む音を心で聴いている。夢だから私に気がついていない。そこへ寺田が声をかけ、そして何があったのか静かに聞いた。
照史はゆっくり話し始め、病気になったと、伝えた。私はそれを聞いて、違和感は的中したと思った。脳が痛むと言っている。
表情は冷静さを保っているのに、いつもより目の輝きが違って見えた。
寺田は彼の固い決意に気がついている。
「父はなんと仰っていましたか?」
「肉体の消滅と魂の不滅を広く伝えることが与えられた使命だと」
照史は一段と穏やかな表情で、恐れがなく冷静で明確だと言った。私には到底受け入れられない。照史に何度話しかけても声は届かない。それにもかかわらず照史と寺田の会話は続いた。
「イエスに創造主がいるように、君の中にも父がいる」
「守られていると? しかし私たちとは何かそれを学ぼうとしても叶いません」
照史は、「自分の罪のなさを観たいと思っても死ぬことが怖いです」と我を剥き出しにして泣いていた。
寺田は肩をだき精霊の愛は、私達が分離の世界にいる間も、ずっと見守ってくれると話した。そして照史を抱きしめている。夢の中の私も泣いて照史に触れたいと手を伸ばしても距離は縮まらない。
彼は私のことを、一生そばにいて守りたい、愛しているから離れたくない。そう泣いているエゴに、頭の中で繰り返し言い続けられ苦しんでいた。肉体には意味がないと、エゴにはっきり言っても通用しないらしい。寺田は自分自身を赦す時、平和が訪れると諭した。
私は号泣して、二人の所に行こうと試みるが、逆にどんどん離れていく。ゆえに声は聞こえてくるのに姿が見えない。最後には、とうとうどこかに行ってしまった。
もう一度名を呼ぶとそこで夢は終わり。ゆっくりと目を開けた。涙で枕がぐちゃぐ ちゃになっている。そして完全に目が覚め朝を迎えた。