お昼すぎに戸隠神社の中社に到着して参拝をした。そば処(どころ)に入店して注文を済ませると、イケちゃんから話しかける。

「今日は天気が良いから奥社まで行きたいけど、松原君は大丈夫かな……」

「うん、大丈夫。蕎麦(そば)を食べてエネルギー補給すれば問題なし!」

「もしかしてさ、緊張しすぎて朝ごはん食べてこなかったの?」

「ゴメン。実はそうなんだ。だから途中で調子が悪くなっちゃった」

「ねえ、松原君。口癖(くちぐせ)なのかもしれないけど、『ゴメン』の連発はやめてほしいな……」松原は「ゴメン」と言いかけてこらえる。

蕎麦を食べ終わると松原は元気になったらしく、表情が明るくなった。「渚さん、では奥社へ参りましょう!」

「レッツゴー!」

車が走り出すと松原が言った。

「さっきの質問だけど、オススメの城は特にない……というか、まだわからないんだ」

「どういうこと?」

「日本100名城って知ってる?」

「うん。調べたことがあるから知ってるよ」

「まだ半分もクリアしていないからさ、本当のオススメが言えないんだよ」

「松原君って真面目(まじめ)なんだね。適当には言えない性格だと疲れたりしないの?」

「相手によって使い分けているつもりだよ」

松原の返答を聞いて、彼が器用なのか不器用なのかというよりも……自分が彼にとって特別な存在なのだと言われている気がした。

あっという間に、奥社へ向かう入り口の駐車場に到着した。

「さあ、ここからは徒歩ですよ。準備は良いですか?」

「はい、オッケーよ。松原君は大丈夫?」

「コンディションはバッチリだよ!」

なだらかな下り坂を進むと大きな鳥居が見える……奥社へのスタート地点だ。冬の時期は、ここで参拝して終了となるらしい。

試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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