松原のテンションが上がると同時に、会話がさらに盛り上がりそうな気配だ。

「一緒に灯台めぐりをしたお姉さんがね、高山市に住んでいるからよ」

「たしか、その女性の名前も渚さんだったっけ……」

「1回しか言ってないのに……よく覚えているのね」

「記憶力は良いかも。ところでさ、他にも行った城はある?」

「私の灯台めぐりってね、有名観光地と合わせての旅なのよ。地元の松本城以外は、電車や路線バスから見た程度かな。そうだ、今度さ、七尾城へ行く予定があるの。松原君は行ったことある?」

「七尾城か……行ったことはないな。写真では見たことがあるよ。でもどうして?」

「えっ、どうして七尾城かってこと? それはね、お姉さんと一緒の灯台めぐりを再開するからよ」

「次はどこの灯台へ行くの?」

「能登半島の東端にある禄剛埼灯台よ。聞いたことある?」

「ゴメン、全然知らない」

「別に謝ることなんてないわ。ねえ、参考までに教えて……オススメのお城はどこかな?」

イケちゃんからの問いかけに、松原は前方を見つめたまま考え中。数分が経過したが、松原は言葉を発しない。オススメの城を真剣に考えていると思い、イケちゃんは松原がしゃべるのを待った。

その後も沈黙が続いたが、ウインカーが点滅してサービスエリアに入った。

「ゴメン、トイレへ行ってくる。渚さんはどうする?」

「私も行きます」

二人は車を降りてトイレへ向かう。トイレが済んで外へ行くと、松原の姿が見当たらない。どうしたのかと思いながらも、イケちゃんはスマホで戸隠そばのチェックをした。「お待たせ。遅くなってゴメン」

松原の様子を見て、お腹の調子が良くないから黙っていたのだと気づいた。

「気にしないで。それより大丈夫なの?」

「朝から緊張しすぎていたみたい。でも、もう大丈夫」ドリンクを買って車に戻りドライブを続ける。