【前回の記事を読む】大量ステロイド点滴を開始すると食欲が増え、眠れない。隣の"先輩"と話しているうちに気分がどんどんハイになり…
第四部:ステロイド祭り、開幕
食欲も暴走した。昼食の制限食が足りない。
「おかわりって」
「ないです」
即答だった。
「夢くらい見させてください」
「売店なら」
「制限が」
「ですよね」
看護師は微笑んだ。慣れている。
私はメニュー表を3回読んだ。読んでも増えない。
午後、異変が来た。眠いのに眠れない。
体は疲れているのに、脳がスイッチオンのまま。
ベッドで目を閉じても、頭の中で会議が開かれている。しかも議長がいない。
議題はどうでもいいことばかりだ。
なぜ点滴スタンドは4本足なのか。
なぜ病院のティッシュは硬いのか。
なぜゼリーはいつも微妙な味なのか。
脳が暇に耐えられなくなると、哲学と文句が増える。
夕方、新キャラ(スーツ入院の彼)が話しかけてきた。
「寝ました?」
「寝てません」
「僕もです」
「薬です」
「ですよね」
彼は苦笑した。
「仕事のメールが止まりません」
「止めましょう」
「無理です」
「腎臓は止まりかけましたけどね」
「ブラックジョークきついです」
でも笑った。笑えるならまだ大丈夫だ。
夜。予告されていた“ハイ”がピークに来た。
妙に前向きになる。謎の自信が湧く。
私はメモ帳に事業計画レベルの人生設計を書き始めていた。
【退院したら本を書く】
【運動習慣つける】
【塩分2g生活レシピ開発】
【病院レビューサイト作る】
今読むと恥ずかしいが、その時は本気だった。
薬が人格に影響するのを、私は身をもって体験していた。