午前1時。
完全に覚醒していた。
廊下を歩く音がよく聞こえる。ナースステーションの笑い声も聞こえる。夜勤の世界は別の街だ。
ナースコールを押した。
「すみません、眠れません」
「ステロイドですね」
「ですね」
「少し弱い眠剤、出ますよ」
「お願いします」
5分後。
小さな錠剤が来た。
「効かなかったら?」
「その時は一緒に朝を迎えましょう」
頼もしいのか何なのか分からない励ましだった。
2日目のパルス。
顔がむくみ始めた。
自撮りして驚いた。
「誰だ」
丸い。
明らかに丸い。
村長に見せた。
「来たな」
「来ました」
「月だ」
「満月です」
「ステロイド名物」
名物にされた。
血糖測定も始まった。指先に針。
「地味にこれ嫌いです」
「人気ないです」
「人気出る要素あります?」
「ないです」
シンプルな会話だった。
数値はやや高め。
「想定内です」
想定されると、ちょっと安心する。
午後、主治医が来た。
「尿量、増えてきてます」
「それは良い?」
「良いです」
ストレートに嬉しかった。
「腎臓、反応してます」
その言葉は効いた。
見えない臓器が、返事をした気がした。
3日目。
副作用フルセットだった。
不眠、食欲、顔のむくみ、情緒の波。
さっきまで前向きだったのに、急に不安になる。
「これ、気分も揺れます?」
看護師に聞いた。
「揺れます」
「ジェットコースターですね」
「安全バー付きの」
「降りられないやつ」
「期間限定です」
期間限定は強い言葉だ。
夕方、突然のイベントが起きた。