【前回の記事を読む】IgA腎症の闘病記録。数値を記録するだけでは心が置いていかれる…継続するために私が書いている項目は例えば…

第十一部:検査数値より先に折れるもの

翌日、私は“楽しい予定”を入れた。

小さいものでいい。

・新しい減塩レシピ挑戦

・闘病ログを物語形式に整理

・お気に入りの映画を見る

・短時間の友人通話

回復は、予定で作る部分がある。

自分で作らなければ。

減塩レシピは失敗した。

薄いを超えて、虚無だった。

「これは芸術」

母が言った。

「現代アートですね」

「味の概念を超えた」

笑った。失敗は、コンテンツになる。

ログ整理は面白かった。

入院初日から読み返す。

怖がっている。

混乱している。

でも観察している。

私は思った。

この人、わりと頑張ってるな。

他人の記録のように読めた。

夜、少し持ち直した。

完全ではないが、だが底ではない。

それで十分だ。自分でちゃんとわかってる。

ログに書いた。

【今日は回復しなかった】

【でも崩れなかった】

この違いは大きい。

闘病は、上がる日だけが価値じゃない。

下がりきらない日も価値がある。

寝る前、薬を飲む。

ふと思った。

この生活、思っていたより続いている。

人は案外、良くも悪くも順応する。

だが順応するまでが長くしんどい。

カレンダーに丸。

低空飛行、安定。

それも立派な飛行だ。

第十二部:夜中の異変と、救急外来の現実

異変は、だいたい夜に来る。

これは闘病あるあるだ。

昼間なら相談できる。電話できる。外来が開いている。だが夜は違う。世界が閉じる。判断を自分でしなければならない。

その日も、夜だった。

午前2時。

目が覚めた。

理由ははっきりしている。

動悸で目が冴えていく。

早い。強い。うるさい。

胸の内側からノックされているみたいだった。

私は手首に指を当てた。

速い。

「100、超えてるな」

時計を見る。

安静時でこれは高い。

息苦しさは軽い。

胸痛はない。

めまいは少し。

救急の目安チェックを頭の中で回す。

闘病者はセルフトリアージが上手くなる。

上手くなってしまう。

トイレに行った。

尿の色、少し濃い。量は少ない。

嫌な組み合わせだった。水を少し飲む。

座る。

深呼吸。

5分たった。変わらない。

次は、10分だ。変わらない。

私は迷った。様子見か。行くか。