【前回の記事を読む】薄汚れた半袖の兄、妹は男物のお下がり……秋なのに薄着の兄妹が気になって仕方なかった
ホームランとフォーマルハウト
三
先週の約束を、水口さんは忘れるどころか、心待ちにしていたようだ。縁側には色違いの保温用水筒が三つと、いろいろない交ぜになったスナック菓子が、籠に山と盛られている。
もてなしのつもりで用意していたのだろう。こんなに純粋な人は、幼子以外見たことがない。一時でも帰ってしまおうかと思ったことに恥ずかしさを覚えた。
と同時に、重大なミスに気がついた。人様の住まいを訪問するのに、手土産の一つも持たないという失態を演じたのだ。
「ごめんなさい。わたし、手ぶらで来てしまいました」
「なんの。たいしたもてなしなどできんが、まあ、ゆっくりしていきなさい」
水口さんは鷹揚に笑うと、縁側を勧めたあと水筒の一つを手渡してくれた。