【前回記事を読む】台所からプラスチックが燃えたような異臭が…父を問いただすと、得意げに「魚を焼いたんだ」と。見ると青くてドロッとした物体が…
第二走者 醸 (ミニチュア・ダックスフント) 平成九年~平成二十二年
口止め料
酒蔵(さかぐら)らしく、小さな樽で犬小屋を作ってもらう。仕事の間は日向に置かれた犬小屋に繋がれて、のんびり眠っている醸(ジョウ)。仕事が終わると、私の車に乗って家に帰る。
家に帰ると、日課のごとく家じゅうを駆け巡り、何か噛むものを見つける。段ボールなど見つけようものなら、細かに噛み砕いてそこら中にばらまく。
「どうだ、こんなに噛みちぎったぞ」
と、見せびらかすように、瞳をキラキラさせて人の顔を見上げる。そしてまだほかに噛みちぎるものはないか、とうろうろ探し回る。
大事なものを噛まれては大変だ。ミルクボーンを毎日与えることにした。ミルクボーンを与えると、美味しそうに噛んでいる。しばらくはおとなしい。が、すぐに食べ終わって、もっとないかと要求する。
仕方がないので、食べ終わるまで時間が稼げる、硬いガムを買ってきて与えた。これじゃあまるで口止め料を、次から次へと要求されているようだ。
ミルクボーンやガムにも飽きたようなので、噛むと笛が鳴るゴム製の玩具(おもちゃ)を買ってきて与えた。すると、今度はそれを四六時中ピューピュー鳴らして遊んでいる。
しばらくして飽きると、おまけでもらった魔女の人形で遊んでいる。さっきまで噛んでいたゴム製の玩具を片付けようとすると、慌ててとり返す。
もうその玩具飽きたから、フリマで売っちゃってもいいわねと言うと、急に惜しくなって「だめ、イヤだ」と駄々をこねる子供と一緒である。
独占欲が強いのか、とりあえず口にくわえられるのは一つなので、魔女の人形は短い手で抑えてキープしている。
そしてまた飽きもせず、ゴム製の玩具の笛を鳴らして遊ぶ。 あまりに長い間ピューピュー笛が鳴り続けるので、疲れていた私はむっとして怒りたくなった。