【前回の記事を読む】「父上とはほとんど会わない。母上も悲しそうな顔をする」後に天皇となる幼い皇子が宮中で抱えた孤独とは

第一章 揺らめく落葉

「山田。ほら。もう、泣くな」

稚鷦鷯は白い布をぶっきらぼうに差し出した。山田の頬がほんのりと染まった。

はにかんでその布をそっと受け取ったが、「えっ?」と、小さな声をあげた。

「これ、私の手巾(しゅきん)よ! さっき、私が貸してあげた物だわ。しかも、びしょ濡れ。これで涙を拭けと言うの?」

文句を言いながらも、嬉しそうにその布で頬をおさえた。一息ついた山田は、侍女が持ってきてくれていた白湯に口を付けた。

「温かい……」

ふーっと息を吐いた。

「山田よ。落ち着いたか?」日爪が優しく問いかけた。

「ええ。大丈夫よ。おじい様。さあ、お話をしてちょうだい」

目と鼻は赤いままであるが、つぶらな瞳は真っ直ぐに日爪を見つめた。日爪の口調は重い。