亮介は孝蔵を見送るとコーヒーカップを片付けた。生意気なことを言ってしまったかと後悔したが、老人は特に怒った風でもなく、検討すると言って帰っていった。
亮介は、まあこれでいいのかなと思うことにした。
孝蔵が家に戻ると、奈津美が夕食の支度をしていた。服を着替えると絹代の部屋に顔を出した。
「行ってきたよ」
「あら、お帰りなさい。寒かった?」
「いや、そうでもなかった。おまえの調子はどうだ」
いつもは自分の調子を聞かれることがなかったので絹代は少し戸惑った。
「特に変わりはありませんよ。あなた、どうしたんですか……」
あなたらしくもないと絹代は言いかけて言葉を飲み込んだ。
「そうか。そうならいいんだ。何か必要なことはあるか?」
絹代は不思議に思いながらも、
「そうしたら、立たせてくださいな」
「そうか」
孝蔵は、妻に肩を貸すと体を支えて立たせた。妻の体は昔と比べ、ずいぶんと軽く感じる。
「おまえ、やせたな。ちゃんと食べているか」
絹代はくすりと微笑み、
「食べていますよ。年を取ると体が軽くなるもんです。私は今がちょうどいいかも」
ペロッと舌を出しておどけてみせた。二人はダイニングキッチンまで来ると、絹代を食卓の椅子に座らせ、孝蔵も向かいに座った。
「夕飯はもうちょっと待っててね」
奈津美が台所から叫んだ。
「ああ」
孝蔵はそう答えると、絹代に話しかけた。
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