東京都立広尾病院事件東京高裁判決と医師法第21条
◆医師法第21条に関する判旨
④医師法第21条違反についての東京高裁の判断
以下において、当審において予備的に変更された訴因(控訴審で検察が検案日時を予備的に病理解剖時点とする旨、訴因変更している)が認定できることを、説明する。
すなわち、C医師はH医師から誤薬の可能性の説明を受けていたほか、平成11年2月11日午前10時44分頃D子の死体を検案し、次いで、予備的訴因で追加されたところの同月12日午後1時頃、病理解剖に立ち会った際、D子の死体の外表を検査して検案を行い、D子の死体の右腕の静脈に沿って赤い色素沈着がある異状を認めたことが明らかである。
⑤所轄警察署への届出
所轄警察署への届出については、C医師は東京都立広尾病院としての判断に委ねており、被告人(院長)は、ポラロイド写真を見せられて死体に異状があるとする報告等を受けるなどしながら、届出しないとの判断を変えなかったことが認められ、以上によれば、被告人(院長)は、医師法第21条に定める所轄警察署への届出をしないことにつき、C医師らと共謀を遂げたことが明らかである。
⑥憲法違反についての東京高裁の見解
診療中の患者の死亡の場合に医師法第21条を適用することは、罪刑法定主義(憲法第31条)に反し、また、不利益供述の拒否特権(憲法第38条1項)に反するとの主張につき判断する。