にこっと笑ったその表情は、とても彼が主張する二十一歳のものには思えなかった。もうすぐ二十六歳になろうとしている私と四つ違いの男には見えない。十八歳くらいだろう。ちょっと目を惹く感じの子で、私は見ない振りをしながらも、彼を見つめていた。

「ねぇ、ちょっと秘密の匂いがするわね」

ウェイトレスをやっているみちるが、私の耳元でささやいた。彼女とは同い年だったの
で、割とよく話をした。

「そうね。不思議な感じがする子だわ」

口下手の私と比べ彼女はよく喋るし、私から見れば実に健康的な精神の持ち主だった。悩むということがあまりないらしい。物事を割り算で考えているかのように、ここではこの顔、この人にはこの顔で付き合うと、しっかり割り切って接していた。

私には、彼女が私向けの顔で付き合っていることが解っていた。けれどそれはけっして不快なものではなかった。それよりも、私の性格をよく把握しているようで、とても楽だった。

「あら? ひいちゃんが気にするなんて、これはよほどだぞ」

みちるがからかうように私の目を見つめた。

「そ、それは……」

言い訳できず、ぶわっと汗が吹き出した。

「ごめん、ごめん。ひいちゃんってかまいたくなるのよ。だって、人を怖がっているんだものぉ」

みちるは私の首に両腕を絡めて、抱きしめるのだった。

「怖いっていうか、その、人の目が気になるのよ」

「八方美人ねぇ。人の目なんか気にしないのよ。だーれもあなたをいじめやしないから」

「だって」

「ひいちゃん、いじめのトラウマがあるね?」

みちるは悪戯っぽい目をして、私の顔を覗き込んだ。

次回更新は4月19日(日)、14時の予定です。

 

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