【前回の記事を読む】「永遠のさよならなんてさ、けっこう簡単にできるんだ」彼はそう言って立ち上がり、部屋のドアに…
壺を抱いたネコニャ
説明している右半身の二割の意識も、それを自分のこととして捉えていなかった。右半身もまた、他人の身に起きた事柄を傍観しながら、第三者に説明する程度の感覚だった。私を苦しめている『もの』を吐き出すために、イメージ世界で、私は自分に都合がいい『私』になっていた。
なぜならこれらは、素のままだったら絶対に喋れない、誰にだって一つくらいはある『汚点』という名の秘密だ。プライドが高ければ絶対に口にはしないだろう。
そんな事柄でさえも、イメージの中で半身が枯れ木になっている私は、トイレット・ペーパーをてぐる程度の日常的軽やかさで、からからと記憶の中からその汚点を引き出し、ころころと芯を回転させるように、舌は何のためらいも後悔もなく私の恥部を喋っていた。
こうして私を苦しめている秘密はカウンセラーの前に晒され、秘密ではなくなっていくの
だった。
「彼は『永遠のさよならなんて、けっこう簡単だ』と言ったのね?」
「そう。ネコニャは右手でドアノブを掴むと私を振り返り、左手を耳のところまで持ち上げて、招き猫のように丸くしたの」
私は喋りながら意識を分銅に変えていた。八個を左半身の皿に載せると、それはずしっと傾き、左側に意識が固定されたイメージが生まれた。これで、そう簡単には八割の意識が右側に移動することはない。苦痛を苦痛と思わずに、右半身は喋れるだろう。
生身の私のままならば、その状況を思い出しただけで悲鳴を上げるであろう発端の風景を、白いトイレット・ペーパーがからからと音を立てて床へ落ちていくイメージの中で、右半身の私はどんどん喋りだした。