俳句・短歌 歴史・地理 短歌 平安の都 2020.09.29 歌集「花と散りにし」より三首 花と散りにし 【第8回】 松下 正樹 平安末期、国を二分する戦いが起こった。それは保元の乱と呼ばれる戦乱であり、古代から中世へと、貴族政治から武家政治へと時代を切り拓いていく端緒となった。 この乱の原因である天皇家と藤原摂関家の内紛から崇徳院の配流という結末までの経緯が詠まれた創作短歌を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 鳥羽院に好かれてありしがなかなかに男子皇子さづかるはかなはず 悔しさは待賢女院にむけられて嫉妬の炎さかんなり 白河院と密ごとありし証ありと噂を流し貶めたり *密事 秘め事。ないしょごと。
小説 『再愛なる聖槍[ミステリーの日ピックアップ]』 【新連載】 由野 寿和 クリスマスイヴ、5年前に別れた妻子と遊園地。娘にプレゼントを用意したが、冷め切った元妻から業務連絡のような電話が来て… かつてイエス・キリストは反逆者とされ、ゴルゴダの丘で磔はりつけにされた。その話には続きがある。公開処刑の直後、一人の処刑人が十字架にかけられた男が死んだか確かめるため、自らの持っていた槍で罪人の脇腹を刺した。その際イエス・キリストの血液が目に入り、処刑人の視力は回復したのだという。その槍は『聖(せい)槍(そう)』と呼ばれ、神の血に触れた聖(せい)遺物(いぶつ)として大きく讃えられた。奇跡の逸話(…
小説 『高校生SM 』 【第3回】 大西 猛 物心ついた頃から、そういう嗜好はあった。周りから孤立した、誰の目にもとまらないような男の子に心を惹かれた。 その日、私は深さ三十センチ横幅二十センチはある大きな穴を掘った。このまま掘り続けたら砂場の砂が尽きてしまうのではというほど大量の砂の山が隣にできた。ひろと君は私以上に大きな穴を掘った。自分がそのまま入ってもまだ余裕があるほどの大きさだった。私がその穴を見て、「すごいね」と言うと、ひろと君は口元を少しだけ上げた。それはあまりに小さな変化だったが、笑ったことに間違いはなかった。私はそのとき少しだけ、…