俳句・短歌 歴史・地理 短歌 平安の都 2021.03.30 歌集「花と散りにし」より三首 花と散りにし 【第34回】 松下 正樹 平安末期、国を二分する戦いが起こった。それは保元の乱と呼ばれる戦乱であり、古代から中世へと、貴族政治から武家政治へと時代を切り拓いていく端緒となった。 この乱の原因である天皇家と藤原摂関家の内紛から崇徳院の配流という結末までの経緯が詠まれた創作短歌を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 雅仁まさひとの日ひごろのふるまひ帝王ていわうの器うつはにあらずと見なされたり 遊びをせんとや生うまれけむ 戯たはぶれせんとや生うまれけむ 遊ぶ子供の声こゑ聞けば 我が身さへこそ動ゆるがるれ 舞へ舞へ蝸牛かたつぶり まことに美しく舞うたらば 華はなの園そのまで遊ばせん
小説 『恋愛配達』 【第15回】 氷満 圭一郎 配達票にサインすると、彼女は思案するように僕の顔を見つめ「じゃあ寄ってく?」と… 「本業は酒屋で、宅配便はバイトです。ところでさ」ぼくはたまらず差し挟まずにはいられない。「さっきからなんなの、どっち、どっちって?」「だってあなた、ドッチ君だもん」「何、ドッチ君て?」すると瞳子さんは、ぼくの胸に付いている名札を指差した。これは配達者が何者であるのか知らせるために、運送会社から貸与されているものだ。ぼくの名前は以前病室で宴会を開いた時に教えていたはずだが、漢字までは教えていない。…
小説 『赤い大河』 【第5回】 塚本 正巳 もしかして私と彼を別れさせた自称間男は、男ではなく、女かも?ある人物が思い浮かび… 「ねえ、今どこにいるの。雹がすごい音を立てて降っているんだけど、そっちは?」冬輝は一言、ああ、とだけ答えて電話を切った。同じ雹の音を聞く距離にいながら、同じ子の親でありながら、この人とはもう二度と会うことはない。冬の夜明けを思わせる鋭利な確信が、凍えた心に深々と突き刺さった。何日も部屋に閉じこもり、冬輝をたぶらかした悪意の出所を探し求めた。店内に携帯電話を持ち込んだことはないので、自称間男が過去…