俳句・短歌 歴史・地理 短歌 平安の都 2021.03.23 歌集「花と散りにし」より三首 花と散りにし 【第33回】 松下 正樹 平安末期、国を二分する戦いが起こった。それは保元の乱と呼ばれる戦乱であり、古代から中世へと、貴族政治から武家政治へと時代を切り拓いていく端緒となった。 この乱の原因である天皇家と藤原摂関家の内紛から崇徳院の配流という結末までの経緯が詠まれた創作短歌を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 都中みやこじゅうの男女をとこをんなを招き入れ夜よの更ふくるまでうたひ明あかしつ 都みやこには噂うはさ流るる雅仁まさひとは今様いまやうぐるひの「虚うつけ者もの」なりと 信西しんせいは乳父めのとにありしがことさらに今様いまやうぐるひをいさめ給はず *信西の妻、朝子が雅仁の乳母めのとを務めていた縁で、信西は乳父の立場にあった。
エッセイ 『プリン騒動[人気連載ピックアップ]』 【新連載】 風間 恵子 「そんなプリンなんか作ってないで、早くメシのしたくしろ!」台所で一挙手一投足に怒り狂う義父。言葉の暴力が鉛となって心臓を突き抜けた。 ある晩のことだった。三人で、夕食のしたくをしていた。この三人と言うのは、舅(しゅうと)・姑(しゅうとめ)・嫁すなわち、私の事である。台所は女の神聖な場所と考えられているのではないか。しかし、この家では、舅が当たり前のように立つことが多い。自分が調理したものは自慢をするが、人の作った料理は決して、美味しいとは言わない。逆に貶す事に喜びを感じるタイプである。野菜の切り方から、味つけまでを一つ一つ指摘…
小説 『春を呼ぶ少女』 【第7回】 桜小路 いをり 白銀に輝くオオカミ…その背後から十歳くらいの子どもが現れた。白い肌に白い髪、そして特徴的にとがった耳。エルフだ。 リリーは、その首をねぎらうようにとんとんと叩き、手綱を握り直します。森の入り口に着くと、フルールはひと声、大きく鳴きました。しんと静まり返った森に、フルールの鳴き声がやわらかく広がっていきます。「ありがとう。始めましょうか」その言葉を合図に、ふたりは走り始めます。リリーは、頬に当たる風の冷たさに思わず目を細めました。後ろへ後ろへと流れていく景色は、冬から春に変わっていきます。硬く縮こまっていた草…