【前回の記事を読む】臨床医を悩ませた“異状死体”の判断基準——死体発見時の経緯・場所・状況等は一切関係なく…

第2章 医療事故調査制度の全体像を理解するために

(Ⅰ)医療事故調査制度でいう医療事故の定義とは

横浜市立大患者取り違え事件、東京都立広尾病院事件、杏林大割り箸事件、東京女子医大人工心肺事件が相次いで発生、医療界への逆風の中、福島県立大野病院事件で医師が逮捕される映像が全国に流されるというショッキングな出来事があり、医師法第21条の脅威が医療界を襲った。

リスク医療からの立ち去りが発生、「医療崩壊」の文字が流行語となる事態となった。この状態を解決すべく俎上に上がってきたのが医療事故調査制度である。当時の自民党政権下、第二次試案、第三次試案・大綱案が出された。この第三次試案・大綱案は責任追及の要素が強く、医療関係者、特に臨床医の反発を招いた。

2004年、東京都立広尾病院事件の最高裁判決が出され、有罪が確定したが、その後、2008年には杏林大割り箸事件、福島県立大野病院事件が相次いで無罪となり、2009年には東京女子医大人工心肺事件も無罪となった。

(1)「医療の内」と「医療の外」の切り分け

厚労省第3次試案・大綱案は責任追及の要素が強く、医師法第21条に関して解決策が示されなかったことから批判の的となった。第3次試案・大綱案は政権交代に伴って店晒しとなり消えていった。

民主党政権下、医療事故調査制度の創設に向けて機運が高まった。病院団体は、四病院団体協議会合意、日本病院団体協議会合意により、「医療の内」と「医療の外」を切り分けて解決することに合意。WHOドラフトガイドラインにのっとる形で、責任追及の制度と医療安全の制度を切り分けて解決することを提案した。