当時、医師法第21条、刑法第211条、医療安全が複雑に絡み合い、医師法第21条問題も医療事故調査制度も解決の糸口がつかめなかった。
医療崩壊が現実味を帯び、政権も交替し混沌とした状況で、それぞれを整理し、現、医療事故調査制度の理論の根底となったものが、「医療の内」と「医療の外」を切り分ける考え方である。医療事故調査制度の基本的な考え方であるので、若干触れておきたい。
「医療の内」と「医療の外」を切り分ける考え方(図2‒1)は日本医療法人協会が提唱し、四病協・日病協合意を得て、病院団体の統一見解となった。WHOドラフトガイドラインは、「学習を目的とした報告制度」と「説明責任を目的とした報告制度」に大別して論じている。病院団体としては図2‒1のように「医療の内」と「医療の外」を切り分けて解決を目指した。
医療事故調査制度の施行に係る検討会では、「医療の内」の制度として議論が行われた。「医療の内」とは、通常の医療の原点である医療者と患者・家族の信頼の上に成り立つ部分である。
医療はハイリスクの複雑系の科学であり、経過中に予期せぬ不幸な事態に立ち至ることもあり得る。この場合でも相互の信頼関係の維持は必要であり、「医療の内」(一連の医療行為内、あるいは医療行為の延長線上)として検証し再発防止に寄与すべきである。これは第一義的に「院内の組織」で検証すべきものである。
写真を拡大 図2-1 基本的な考え方(四病協・日病協合意に基づく概念図)(当時)
日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業も「医療の内」の仕組みと考えられる。WHOドラフトガイドラインでいうところの「学習を目的とした報告制度」に該当するであろう。現、医療事故調査制度はこの「医療の内」の仕組みとして出来上がった。