千晶が110番すると警察がやってきて、三人は鑑識に家から追い出され、家の前で2人の刑事に事情聴取を受けた。
「警視庁新宿警察署刑事課の羽牟太郎です。言っときますけどアニメのハムスターより僕の方が先に生まれてますからね。こちらは警視庁捜査一課の鍬下紳司君。イケメンでしょ。若いけど僕よりずっと優秀なんですよ」
銀縁眼鏡をかけた狐目の中年刑事は名刺を渡しながら後ろに控えている若い刑事を紹介した。その鍬下は彼女達に挨拶もせず羽牟とは対照的に無愛想な様子だった。
「ところで家や部屋の鍵を無断で開けたんだって。随分大胆なことしたね」
「あ、あ、それは、千晶が林さんに長い間連絡が取れなくて何かあったんじゃないかって心配になってこちらの探偵さんに相談して、もし、家の中で倒れているんだったらすぐにでも救助しないと助からないということになって鍵を開けることになったんです」
麻利衣が慌ててその場凌ぎの嘘をついた。
「ふうん。その眼鏡はどうしたの?」
「あ、いや、これは昨日転んじゃって」
「そう。ところで君が探偵さん? 今時はこんなに若くて綺麗な女性が探偵なんて大変な仕事するようになったんだね。鍵を開けるのには慣れているのかい?」
羽牟が賽子に訊ねた。
「当たり前だ」
賽子は素気なく答えた。
「そう。ところで亡くなった林さんは増田さんと交際されていたそうですね。最後に彼から連絡があったのが3月9日。そこから急に連絡が途絶えたと。だとすると彼が死亡したのは3月9日以降ということになる。ところでその間、増田さん、あなたは彼に連絡をされたんですか?」
「いいえ」
「ほう、それはどうして?」
「私、彼とはもう別れようと思っていたんです。彼は私に暴力をふるって、ストーカー行為もしていました。そして3月10日に明日私を殺すって脅されたんです。だからこちらからは怖くて連絡できませんでした」
「それなのにわざわざ探偵を雇って家捜しを?」
「急に連絡が来なくなったのが逆に不安になったんです。でもまさか殺されていたなんて……」
「ちょっと待ってください。僕達はまだ彼が殺されたとは言っていませんよ」
「で、でもあの状態で自殺なんて無理ですよね」
「まあ、確かに」
次回更新は12月24日(水)、21時の予定です。