【前回の記事を読む】「父はまだ死んでません!」…「それ以上やっても無駄」と言われても、心臓マッサージを続けた。「ふざけるな……戻って!」

サイコ2――死の予言者

崇夫の遺体は翌朝には檜原の別荘に戻り、大広間の振り子時計の下の暖炉の前の花に囲まれた棺の中に安置された。

テーブルは片付けられ、椅子が棺に面するように2列に並べられ、広間は足立と家政婦によって葬儀に相応しい体裁に整えられていた。ひとみは棺のすぐ前の席に座って背を丸め、涸れない涙をハンカチで拭っていた。左隣に座った千晶が彼女の背を優しくさすった。そこへ貴子ら三人が現れた。

「今泣いてたってしょうがないでしょ。私なら弔問客が来た時のために涙はとっておくけどね」

「さすがお母様」

直美が母親の腕にすがって言った。

「残念ですが、弔問客はいらっしゃいません」

背後から足立が言った。

「はあ? 国内有数の企業グループの元会長が亡くなったっていうのに、弔問客が来ないはずないでしょ」

「旦那様の以前からのご遺言で、ご自身の葬儀は身内だけで済ますようにきつく言いつかっております」

「身内だけって、じゃあこいつらは何なのよ。あの占い師は」

貴子は麻利衣たちを睨んだ後、後ろの隅の席に脚を組んで座っている華怜を指差した。

「この方々は成り行き上やむをえません。明朝出棺の予定です。旦那様は無宗教を貫いておられましたので、それまでの間、宗教的な儀式も行われません。ただ、故人とのお別れを悼んでいただければと」

「何言ってんのよ、馬鹿馬鹿しい。弔問客も来ない、坊さんも来ないのならこんな辛気臭い所にいつまでもぐずぐずしていられるわけないじゃない。私達は部屋に戻ります。

下手に外に行って悪評でも立てられたらまずいし、せめて家政婦に美味しい料理を作らせなさいよ。そうじゃなきゃ、明日まで耐えられないわよ、こんな所。そうだ。遺言書の中身はいつ見られるの?」

「遺言書は私が預かっております。月曜日には家庭裁判所に検認を申請します」

「早くしてちょうだい。私の顧問弁護士にも伝えておくから。本当にそれが夫の遺志であるかどうかよーく確認しないといけないからね」

貴子たちが広間を立ち去ろうとした時、突然華怜が呼び止めた。

「お待ちください」

ぎょっとして貴子は振り向き、おどおどした態度を見せた。

「何よ」

「何か悪い予感がします。再びこの家に恐ろしい黒い影が近づいているようです。また占いをしなければならないようです」

貴子は呆れて言った。

「いい加減なこと言わないでよ。私はあんたの占いなんて信じちゃいないんだからね。あの人の死亡時刻を当てたのだって、ただのまぐれか、さもなきゃあんたが殺したんじゃないかと思ってるくらいなんだから」

「お信じにならないのなら結構です。それでは勝手に占わせていただきます」

そう言って華怜は立ち上がり、棺の前に立つと、事もあろうに棺の上にタロットカードをスプレッドした。