【前回の記事を読む】「お父さん、開けて!」…余命宣告を受けた父の部屋から返事がない。無理矢理開けたドアの先、衝撃的な光景が…
サイコ2――死の予言者
「私、替わるわ」
「ありがとう」
今度は麻利衣が心臓マッサージを再開した。その時、黒いドレスを着た華怜が悠々と部屋に入ってきて、心肺蘇生を受けている崇夫を冷たい視線で眺めた。
「やはり予言通りになりましたね。人間というものは自らの運命には逆らえないもの。ご冥福をお祈りします」
「父はまだ死んでいません!」
ひとみが悲痛な声で叫んだ。
「それ以上頑張っても無駄です」
「ふざけるな……ふざけるな! 戻って!」
懸命に心臓マッサージしながら麻利衣が叫んだ時、遠くから救急車のサイレンが聞こえてきた。
夜明けにERの処置室に家族が招き入れられ、医師から小佐々崇夫の死亡宣告を受けた。しばらくして処置室から出てきたひとみは落涙しながらおぼつかない足取りで、待合室のベンチに座っている千晶、麻利衣、賽子、足立の元にやってくると、憔悴しきった様子でベンチに腰を下ろした。
「ひとみ、力になれなくてごめん」
千晶が謝ると彼女は力なく首を振った。
「千晶は本当によくしてくれた。ありがとう」
「亡くなった原因は?」
「先生は心筋梗塞からくるショックもしくは致死的不整脈だろうって」
「やっぱり。再手術を勧められていたということはバイパスがかなり閉塞しかかっていたんでしょうね」
「でも私、納得がいかない。確かに父の心臓は危険な状態だったかもしれないけど、死亡日時まで正確に言い当てるなんてとても信じられない。恐ろしいことだけど、私、ひょっとすると島木華怜が父を殺したんじゃないかって思ってるの」
「あの人が? でも何のために?」
「分からない。でも、あの人はきっと財産目当てに父に近づいたんじゃないかと思う。ひょっとすると、あの遺書には彼女に遺産を相続させると書かれているのかもしれない」
「えっ、でも小佐々さんは最後にあなたに全ての財産を相続させるって言ってたじゃない」
「でも、もし遺書が捏造されていたら……こんなこと考えるの、あさましいとは思うけど」
その時麻利衣が口を挟んだ。
「でも、もしそうだとしたら何で華怜は予言なんかしたんだろう? 遺産目当ての殺人なら、予告なんてしない方が警戒されずに済むし、予言なんてしたら自分が犯人ですって言ってるようなものだよね」