【前回の記事を読む】元気に80歳を過ぎた今を楽しむことができているのは、妻の病気を二人で一緒に乗り越えるチャレンジに取り組めたおかげである
第1章 原因不明
風邪のような症状が兆候だった
1999年10月、妻が自己免疫疾患である多発性硬化症を発症しました。1〜2ヵ月前から風邪のような症状でグズグズしており、近所の内科医を受診したところ風邪薬を処方されました。
しかし4、5日後、夕食の片付けで食器類を洗いながら、「水を扱う左右の手の感覚が違う」と訴えてきました。次の日の早朝、私が仕事で家を出るときやっとのことで起き上がり玄関まで見送りに来たのですが、片足を引きずっていました。妻の話では、その直後に症状が悪化したとのことです。
当時川崎に住んでいました長女を呼び出し、付き添われて近隣病院の救急外来を受診しましたが、問診中に手足が麻痺して崩れ落ち立ち上がることができなくなり即入院、ステロイドの点滴注入が開始されたそうです。私が翌日帰宅してすぐに病院に行きましたときは、左半身がピクリとも動かせない状態でした。
3日間のステロイドパルス療法が終わるとわずかに指先が動くようになり、1週間ぐらいで寝返りもできるようになったと記憶しています。
リハビリを終え、家事がなんとかできるくらいになり退院をしましたが、その約3年後には右目の視野が狭くなり再度入院し、再びステロイドパルス療法を受けこのとき初めて「病名は多発性硬化症である」と告げられたのです。
聞き覚えのない方も多いと思いますが、多発性硬化症とは、本来よそから侵入してきたウイルスや細菌から身体を守る役割を持つ物質である白血球が、神経細胞を攻撃し神経伝達が阻害され手足等の運動機能障害を引き起こす病気です。このような免疫システムに異常が出る病気は「自己免疫疾患」と呼ばれます。
妻の場合、発症当初は手足がまったく動かず、3日間のステロイドパルス療法終了後も手足のしびれ、ピリピリ感、尿や糞便の排泄障害がありました。