私は、自分の事を大切にできているだろうか。照史は、もう見習い春ちゃんじゃないね、と褒めてくれるが私は、何もわかっていないし、自分では説明できない。

早く照史がいる場所に近づきたいと感じた。カフェを出て、散歩を再開し歩いていると、だんだん見事な夕焼けが見えてきた。

空が焼けるように赤く太陽の神秘を感じる。二人とも息を呑んで、しばらく黙って見とれた。坂を上がり切った高台は、すごく見晴らしが良い。街並みと、自然のコントラストが圧巻だ。

「この夕焼けは神様が作られたの?」

「それは違うよ。夕焼けは神の創造物ではないけれど、神はどこにでもいるし、何にでも宿る。柔らかい光で包み込んでくれる」

照史が、この夕焼けも、景色も、幻想で儚い夢とわかっていても、つい心を囚われてしまうと言った。

私の手を取りきつく握り、赤色から黄色、緑と移り変わっていく様を二人でじっと見つめた。

私は、神様が作られたのかと思っていたが、照史は美しいと感じたのだから理由はいらないと言った。彼と話していると驚かされる。

「確信があるから。私もそうなりたい」

「確信? 君が望むなら叶うさ」

一緒に過ごす時間は、かけがえのないものになって、二人一緒なら苦難も乗り越えられる。目の前にキラキラと光の粒子が私たちをまとい祝福されている様だった。

 

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